UV印刷トラブル問答
No. | 項目 | 方式・タイプ | 現象・状況 | 解説 | 原因区分 | 対策 |
501 | 印刷物不良 (後加工不良) |
全システム | 一般タイプのインキからUVインキに変更したところ、印字不良、箔押し不良、フィルム張り不良、糊付け不良、水性ニス密着不良等の現象が発生した。 | 基本的にUVインキは従来型インキと組成が異なるので後加工を施す際は再度、事前確認が必要。また、UVインキタイプによっても違いがあるので確認が必要。※ インキタイプ、品種によってはスリップ剤が添加されているタイプがあり、この場合は後加工性は出来ない。 | インキ選択ミス 加工指示ミス |
①UV印刷物に後加工を施す際は事前に確認し、適性のある諸資材を使用する。②糊付け不良、箔押し不良、印字不良の場合には抜き絵柄を検討する。さらに糊付け不良の場合にはミシン目も有効な手段となる。③加工条件を見直す。④UVインキタイプを見直してみる。 |
502 | 印刷物不良 (後加工不良) |
全システム | 以前より行なっていた"UV印刷+後加工"の印刷物においても印字不良、箔押し不良、フィルム張り不良、糊付け不良、水性ニス密着不良等の後加工トラブルが発生した。 | 従来問題なかった加工仕様が不良となった場合は、過剰硬化、経時変化によってUVインキ皮膜の硬度が増したことによることが多い。また、加工条件に変更がないかどうか確認が必要。 | 過剰硬化 経時変化 後加工条件 |
①UVランプ設定を確認する。(ランプ交換時には硬化性が向上する。)②加工条件を見直す。③印刷→加工までの時間を短縮する。④インキタイプを変更する。 |
503 | 印刷物不良 (裏移り、ブロッキング) |
全システム | 裏移り、ブロッキングトラブルの発生。 | 硬化不良が原因。副因として原紙、湿度の影響もある。 | 硬化不良 保管条件 |
①硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。②原紙の変更。③印刷物の保管状態の管理。 |
504 | 印刷物不良 (カール) |
全システム | カールの発生。 | UV印刷物は硬化収縮の影響を受け、基本的に全て内カールとなる。特に片面コート紙印刷の場合や厚盛り印刷時、コーターニス使用時など盛りが多い場合に発生しやすい。 | インキ特性 | ①乾燥の遅い(密着性の良い)タイプに変更して、カールの低減を図る。②ニスを含めた全体の盛り量を減らす。③使用紙を変更する。 |
505 | 印刷物不良 (ゴースト) |
全システム | 両面印刷時、初刷り面絵柄が上がり面に浮き出る現象を(ケミカル)ゴーストという。 | 頻度はかなり少ないが、溶剤を使用していないUVインキでも状況によっては(ケミカル)ゴーストが発生することがある。原因はUV照射時に発生する低分子量ガスのマイグレーションによる。フィルムなどの非吸収原反で起こりやすい。また、硬化性が不十分な場合も起こりやすい。 | 硬化不良 用紙の影響 |
①硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。②発生ガス飛散のため風入れをする。③上がり面印刷時、メジウムなどを先刷りすることで着肉性を均一にする。 |
506 | 印刷物不良 (ゴースト) |
オフセット | 印刷絵柄の影響により、平網やベタ部に同一面上にある絵柄どおりの濃淡が発生する現象を(絵柄)ゴーストと言う。 | もともと流動性の悪いインキやインキの過剰乳化によって流動性が悪化した場合、インキ着けローラー上で伸びづらくなるために(絵柄)ゴーストが発生しやすい。油性インキでも発生するが、乳化特性の弱いUVインキのほうが発生しやすい。 | インキ特性 過剰乳化 |
①印刷時の湿し水供給量を抑える。②インキタイプの変更(耐乳化性、流動性)③面付けの調整。④捨て版を設ける。 |
507 | 印刷物不良 (臭気) |
全システム | UVインキ特有の臭気がする。 | A) インキタイプ別の固有な臭気は、開始剤臭気による場合が多い。B) 硬化性が不十分な場合にはさらに臭気が強くなる。 | インキ特性 硬化不良 |
①インキタイプを変更する。②十分に硬化させる。(硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。)③風入れ等を実施する。 |
508 | 印刷物不良 (耐光性、耐候性) |
全システム | "光(紫外線)"による色落ち(主に屋内掲示)。(耐光性)"光(紫外線)+水"による色落ち(主に屋外掲示)。(耐候性) | 顔料個々の構造による。特に黄、紅や金赤インキが退色しやすい。→ 油性インキと基本的に変わりなく、目的・用途に応じた色インキ選択が必要。→ 網点のハイライト部分や淡色の特色インキの場合にはさらに悪化するので注意が必要。 | 顔料特性 インキ選択ミス |
①耐性表を確認して耐光性・耐候性の強い顔料を使用したインキ(超耐光性、SR)を選択する。②淡色の特色や5%以下の補色に使用する場合は超耐光性ランク以上のインキを使用する。 |
509 | 印刷物不良 (耐摩擦性不良) |
全システム | 耐摩擦性が十分な印刷物でも搬送時に擦れが発生した。 | 砂粒などの硬い粒子が印刷物に付着した状態で振動を与えた場合に擦れが発生する。顕微鏡で観察すると、蛇がのた打ち回ったような傷痕になることが多い。 | 印刷物管理 | ①砂埃、スプレーパウダーなどの粒子の侵入を防止する。②印刷物の梱包方法の検討。③インキ面では状況によって滑り性を上げたほうが良い場合や下げたほうが良い場合もあり、一概に言えない。 |
510 | 印刷物不良 (ブリード、色落ち) |
全システム | 油性と同じく、金赤・紅・ピンク系統及び墨インキの一部、蛍光インキでブリードや色落ちのトラブルが発生することがある。 | レトルト、水性ニス、対内容物や対石鹸などでブリードが発生する。→ 顔料に起因したトラブル。 | 顔料特性 インキ選択ミス |
①耐性表を確認し、耐石鹸性や耐溶剤性が良好なインキに変更する。耐性がわからない場合はインキメーカーに確認する。 |
511 | 印刷物不良 (割れ) |
全システム | 断裁・折り加工、シュリンク加工等の際、インキ皮膜が割れたり、欠けたりする。場合によっては、原反から割れる場合もある。 | UVインキは他のインキと比較して硬く脆い性質が強く、割れ易い傾向にある。また、UVインキタイプの中でも耐割れ性に違いがある。 | インキ特性 インキ選択ミス 加工条件ミス |
①インキ盛りを下げる。②柔軟性の良い(密着性の良い方向)タイプに変更する。③過照射に気をつける。④加工条件を適正にする。(断裁刃、折り刃の調整など)⑤絵柄、紙目を考慮する。⑥原反、印刷物のシーズニング(加湿)。 |
512 | 印刷物不良 (耐摩擦性不良) |
オフセット | 耐摩擦性が弱い。スクラッチ耐性が弱い。 | A) UVハイブリッドインキ、フィルム用UVインキは特性上、速乾性紙用インキより弱い。B) その他の場合は硬化不良が原因であることが多く、硬化不良の項を参照。また、各種省電力システムについても注意が必要。 | インキ特性 硬化不良 |
①インキ特性上のため、インキ的には困難。②OPニスを使用する。③UV照射量を増やす。(ただし、省電力インキの場合にはUV照射を強めた場合、エコマーク対象外となることがある。) |
513 | 印刷物不良 (ヒゲ) |
オフセット | 画線部から咥え尻に向かって印刷方向にヒゲ(細かい筋)が出る。 | ブランケットからインキが離れる際に発生する糸引き現象。インキ盛り量が多い時や過剰乳化しても発生しやすくなる。インキ形状や乳化特性の違いにより、UVインキのほうが起こりやすい。 | インキ特性 過剰乳化 |
①インキタイプを変更する。②コンクタイプのインキを選択する。③インキ及び湿し水の供給量を抑える。 |
514 | 印刷物不良 (滑り不良) |
コーターニス | コーターニスの滑り性が悪く、印刷物の擦れや最終ユーザーでの充填ライン不良などが発生する。 | 原因はA) ニス選択ミス(タイプごとで滑り性が異なる。)、B) ニス硬化不良による。C) 盛り量が多くなると滑り難くなる。また、印刷時の湿度が高いほど、ニス表面硬化性に影響を与えるため、滑り性が変化する。 | ニス選択ミス 硬化不良 印刷環境 |
①目的に合ったニス選択をする。②硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。③一定の盛り量にする。④湿度コントロールを実施する。 |
515 | 印刷物不良 (耐光性、黄変) |
コートニス | 増白剤を使用したコートニスが陳列中に黄変した。 | 増白剤の退色による。(増白剤は耐光性が弱いので注意する。) | ニス選択ミス | ①増白剤を使用していないニスタイプに変更する。 |
516 | 印刷物不良 (ブロッキング) |
コーターニス | ニス掛けした印刷物を保管していたところ、ブロッキングが発生した。 | ニス面-ニス面やニス面-フィルム貼合面でも稀に発生するが、両面にコート層を持った用紙で原反コート層-ニス面でブロッキングを起こし、ニス面にコート層が付着するトラブルが多い。(稀にUVインキでも発生する。)→ 原紙、ニスタイプによる影響、温湿度、荷重の影響。→ 硬化不良の影響。 | ニス選択ミス 用紙選択ミス 硬化不良 |
①滑り性、ブロッキング性を考慮したタイプに変更する。②紙面強度の強い原反を選択する。③印刷前後も含めた温湿度、荷重管理。④硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。 |
517 | 印刷物不良 (ノーカーボン紙変色) |
BF | ノーカーボン紙印刷において変色が発生した。(黄変) | 特定の開始剤(増感剤)とノーカーボン紙の薬剤との間で反応が起こり、変色する。 | インキ選択ミス | ①"UV RNC"、"UV NVR"など専用インキを使用する。 |
518 | 印刷物不良 (減感インキ) |
BF | 減感インキ印刷箇所に接した色インキが変色、ブリードした。 | 減感インキ成分に耐性のない顔料を使用したインキで印刷したため。 | インキ選択ミス | ①減感インキ耐性のあるインキを選択する。 |
519 | 印刷物不良 (読み取り不良) |
BF | OCRやOMRで読み取り不良となる。 | 特色作成時に不適合色を使用したり、印刷時に濃度管理、読み取りチェックを行なっていなかったため。 | インキ選定ミス 印刷管理ミス |
①PCS値測定器にて調色管理、印刷管理を実施する。 |
520 | 印刷物不良 (サーマル紙) |
BF、ラベル | サーマル紙UV印刷物の印字工程でサーマルヘッド汚れやそれに汚れによる印字不良が発生した。 | 耐熱、ヘッド走行性の弱いインキタイプを使用したために発生する。また、適性のあるインキでも硬化不良の場合には同じ現象が発生する。 | インキ選択ミス 硬化不良 |
①サーマル紙印刷に適合したUVインキを選択する。②硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。 |
521 | 印刷物不良 (サーマル紙) |
BF、ラベル | サーマル印字の際、UVインキ印刷部分、またはUVインキに接触した部分の印字発色が悪い。 | UVインキの硬化不良が原因であることが多く、未硬化成分が発色層を変質させるため。 | インキ選択ミス 硬化不良 |
①サーマル紙印刷に適合したUVインキを選択する。②硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。 |
522 | 印刷物不良 (蛍光インキゴースト) |
蛍光Pシリーズ | 蛍光Pシリーズ及び蛍光Pシリーズを混入したインキを印刷、反対面にゴーストトラブルが発生した。 | 他のUVインキと異なり、蛍光Pシリーズはケミカルゴーストが発生しやすい。理由は①油性の蛍光ベースを使用している。②インキ盛りが多くなりやすい。③硬化が不十分となりやすいため。 | 硬化不良 顔料特性 |
①硬化不良の各項を参照し、原因を改善する。②発生ガス飛散のため風入れをする。③上がり面印刷時、メジウムなどを先刷りすることで着肉性を均一にする。 |